S夫人の椅子
S夫人(80代)と知り合って25年。
彼女は、中国史の勉強会の世話人で、三年前に電車でバッタリ再会したおたまに「こんなのやってるから、いらっしゃいよ」と誘ってくださった。
二・三日前にそのS夫人からお電話をいただき
「一度、お昼をご一緒しませんか?」というお誘いだった
Tさん。Aさん(どちらも70代)にも声を掛けるとのこと。
Aさんとおたまは、昔何かで一緒になったことがあり、偶然に「中国史勉強会」で繋がった。
「S先生。お寂しいのよ。おしゃべりがしたいんだわ。おたまちゃん行ってあげてね。」とわざわざ電話をしてこられた。
Tさん。Aさんはその関係性からSさんを「S先生」と呼ばれるが
一番年の若いおたまは「Sさん」または「夫人(フーレン)」と呼ぶ。
大学教授だったご主人を4年前に亡くされた。
「チューリップを植えていて、ふと思ったの。何のために植えてるのかな?って。見てくれる人もいないのに・・」
庭なんか、要らない・・と
身辺を小さくして駅前のマンションに移って来られた。
3人の子どもさんは皆、学術研究の道に進まれている。
筑波に住む息子さんは遠いが、二人の娘さんの家族は同じ街にすむ。
「お近くで心丈夫ですね。」というと、
「あちらも、こちらも立てなきゃいけないでしょ。相談事も片方だけにというわけにはいかなくて・・」
我が娘でも、気を遣うことも多いらしい。
Sさんの素敵なところは、「寄りかからない」ということだろう。
茨木のり子の詩である。
「倚りかからず」
もはや
いかなる権威にもよりかかりたくはない
・
・
・
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみでたっていて
・
・
Sさんがどういう業績をのこしたとか
まして、(いわゆるエリートといわれる)誰かの妻であり。誰かの母であるという視点で話をされることはない。
そこのところに価値を置いておられないのだろう。
レベルとラベルの好きな人。たまに居る・・
友達にはならないけど・・
この詩はこう続く
・
・
なに不都合のことやある
よりかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
・
寂しさで、背もたれが少しきしんだら
いつでもおしゃべりしましょうね。 S夫人。
ということで、台風の中を出掛けてきた。
待たせてはいけないと、15分前に行ったのに
3人は傘をさして立っておられた。
サイドバーのバックナンバーをクリックすると全記事がご覧になれます。
2009/9~2013/8 の記事はコチラです⇒http://nurebumi.cocolog-nifty.
| 固定リンク | 0
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 夕立と縁談(2022.07.28)
- 気分はちょっちブルージー(2022.07.11)
- やれやれな選択(2022.07.08)
- 旬・アジな話(2022.07.07)
コメント
花好きで小さな庭、鉢植えにといろいろ植えています、夫と二人暮らし。
きれいだねとはそうそう言わない夫だけど。
いつかひとりで庭を見る日が来たらとS夫人のお気持ちを思いました。
「寄りかかるのは椅子だけ」そんな風なS夫人はすてきです。
さみしさでS夫人の椅子がきしんだらいつでもおしゃべりしましょうねとおっしゃるおたまさんも
とってもすてきです。
投稿: kazu | 2014年8月10日 (日) 22時09分
S夫人、生き方上手。
そしてそんな夫人に
「椅子がきしんだらいつでもおしゃべりしましょうね」といえるおたまねえさまも。
ところで明星氏はどうしているのか。
お盆なのに帰らないのか。
お盆なのに帰れないヴェルデは明星氏のことがちょっと気になってます。
投稿: ヴェルデ | 2014年8月11日 (月) 00時44分
kazuさん
寂しさを「寂しいわ。私まだまだね・・」と言えるS夫人は素敵です。
そのこと(寂しい)がわかっていたら対処の方法がありますから・・
翻って、自分自身はどうかというと、寂しいんだか寂しくないんだか、わからないままでずっと来ています
でも、S夫人の寂しさはわかります。
どこかに「そんなこと言ったって仕方ないじゃん」というのがあるのかもしれません。S夫人によると「おたまちゃんは若かったから元気だったのよ」とのことです。
ヴェルデさん
己を律するというのは大事です。はい。
明星氏ねえ・・よく聞いてくださったわ。
うんともすんとも言ってきません。
やきもきしています。
メールをすればいいのですが
何かやだ。
平凡氏に「お母ちゃんが大分、弱ってる。」って電話をしろ!といったのですが
ピンピンしてるのに、なんで嘘つかなあかんねん。と断られました。
ま、いつもピークをずらして「明日、帰るわ」と言ってくるのでまっておきます
投稿: おたま | 2014年8月11日 (月) 08時01分
おたまさん、おはようございます。
実にじ~んとくるb文章です。
本当におたまさんは良いお友だちを持っていらっしゃる!
最新の文章でもジャズボーカルの練習・・・
ともかくその人のつながりの奥深さが凄く羨ましいです。
どうしたらそういう人間関係を構築することが出来るのか
ぜひぜひコツを教えてくださいますようお願いいたしますm(_ _)m
投稿: こごろう | 2014年8月11日 (月) 09時09分
>いつもピークをずらして「明日、帰るわ」と言ってくるのでまっておきます。
あら、賢いお子。ピークをずらすのはよいことですわ。でも、いきなり「明日帰る」では、ごちそうの用意ができませんよねえ。
親としては帰省する子供には、熱烈歓迎満漢全席!な食卓を用意したいのですよね。
ヴェルデは用意される側です。孫がいてもおかしくない年の娘に、夏であればスイカを買って待っていてくれる傘寿の両親をもっております。両親は6月くらいから、私が実家によるときにはスイカを用意してくれています。
明星氏、この親心をわかってくれたまえ。
投稿: ヴェルデ | 2014年8月12日 (火) 01時01分
こごろうさん
う~ん。そうですかねえ・・よくわかんない
ただ、「好きな人としか付き合わない」というのはあるかもしれません。
付き合う人を選べるというのは主婦の特権ですね。セクハラ上司もいやなお局さんもいないですからね。
こごろうさんこそ「人」をお相手に生きておられるのだから・・「面白い」こと満載でしょう
ヴェルデさん
それが・・ですね。
あと、数時間したら帰ってきますねん
詳しくは本日のブログを覗いてちょんまげ。
さあ・・スイカ買いに行かなきゃ!!!
ははははははは
投稿: おたま | 2014年8月12日 (火) 06時46分
windowには、もたれるなの張り紙を一字消して
widowには、もたれるな
としてあったという英国ジョークを思い出しました
なりたての未亡人
あの人には生きようという気概が無かった。
社長を倅に譲ったら何もやることが浮かばん人やったわ
とのたまいました。
あんたは、強いなぁと云えません。。
まだまだ肩に力入ったはります。
息子が一度だけ哀しげな顔みたそうです。
投稿: youko | 2014年8月12日 (火) 22時20分
youkoさん
そのwidowってうちの近所の生コン会社のY夫人?まさかね。
上手いこと、花も嵐も踏みにじる方法教えてあげたいわ。
youkoさんもその時は、おたまにおまかせね
投稿: おたま | 2014年8月13日 (水) 18時27分