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2013年10月27日 (日)

一期一会の二上山・その1


   


一度しか会ったことがないのに
いつまでも忘れられない人がいます。

「一期一会」とは人との接し方の心得。

あの時の、その方も「一期一会」の心で接して下さったのではないかと思うのです。

其のころ、「折口信夫」(おりぐちしのぶ)に凝っていました。

「一山の蝉は死にけむ
       哭きふせるわれうしろにし人かへり行く」

「ぢっとして大木のもとに二人ゐる
       これをや一期のわかれなるべき」

「太秦寺」と名づけられた釈迢空(折口信夫)のこれらの歌。

恋の歌なのでしょう。

でも、普通の恋ではないようです。

身を引き裂かれるような別れ。
それを強いられなければならない事情。
別れの悲しみというより身をよじるような慟哭の歌です。

この胸に迫る別離の辛さはどこからくるのか・・。

丁度、折口の「死者の書」を読んでいました。
当麻寺の曼荼羅伝説につながる中将姫の物語です。
難解この上なく、若干持て余していましたが・・

そんな流れで、二上山のふもと、「当麻寺」を訪れました。

045

今から10年前。姑の49日の喪が明けたころでした。

季節は秋。ちょうど今頃です。
朝起きて思い立ち、車ででかけました。

運転免許は独身の頃から持っていましたが必要以外で一人でドライブなど初めてのことではなかったかと思います。

当麻寺の北門の傍にある小さな駐車スペースに車を停めました。
この細い道に入ってくるまでに墓地があり「中将姫の墓」と書かれた立札が目に入っていましたので、行ってみようと思いました。

車から降り、こんなに良い季節なのに誰一人歩いていない道を歩き始めたとき
後ろから声を掛けられました。

「どちらへいらっしゃいますか?」

長身のご老人と申し上げていい年頃の男の方でした。

姿勢の良さが印象的でした。
そして不思議なことに何か懐かしい思いがしました。

                                  つづく

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