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2020年1月29日 (水)

隣のおじさん



  

  「婚の荷の部屋水仙の香の満つる」
                (季語/水仙・冬)

 

Img_6288

 

実家の隣のおじさんは和歌山は串本の出身だった。
お酒が入ると「串本節」を歌った。
低く、しみじみとした「串本節」だった。
それ以外は家族ともあまり口をきかず
まあ、明治の最後に生まれた男の人はみんな無口だったのかもしれないけれど。

還暦を超えると「余命幾ばくもない」というのが口癖になった。
「おたまちゃん。おじちゃんな、棺桶に片足突っ込んでるねん」
「それ、どういう意味?」
「余命いくばくもないということや」
よくそんな風に言っていた。

おじさんはクラシック音楽が大好きで
夜8時になると大音量でFM放送を聴きながら床についた。

おじさんの家には、おっきいお姉ちゃんと、お兄ちゃんと、ちっこいお姉ちゃんがいて良く可愛がってもらった。

 

私の結婚式の朝、お隣のおばさんが「これお父ちゃんから・・」
手紙を持って来られた。
私の記憶では前夜、おじさんのところへご挨拶に行ったと思う。
「おかしいでしょ。自分の娘たちには手紙なんて書きもしなかったのにね」
美人のおばさんが笑った。

それは巻紙に、毛筆でしたためられていた。
おじさんは達筆であった。

内容は「幸せになりなさい」という事だったと思うけど、なにしろ今から式場に向かうというときである。
読んだあと、母に渡した。母はそれをどこかに仕舞ってくれたはずだ。
新婚旅行へ行っている間に、婚礼の荷物が新居に運ばれることになっていて、母はその中に確かに入れたと言った。

結局私はその時しかその手紙を読んでいない。
が、「おたまちゃんへ、今朝、庭に咲いてゐた水仙の花を贈ろう。水仙の花がよく似合うおたまちゃんに」
という一文が心に残っている

 

「余命いくばくもない」といつも言っていたおじさんは99歳で長寿を全うし。
あたしは水仙とは程遠い女になり、あの頃のおじさんの齢を越えている。

 


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コメント

水仙は花首を垂れているから、そういうつつましい花が似合うとおっしゃったのでしょうか?素敵なおじさまですね。
そして水仙の似合わない今のおたまさんは…(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

投稿: ばんび | 2020年1月29日 (水) 11時05分

★ばんびさんへ
今はそうですねえ・・花ならば
「ラフレシア」
強烈な匂いでハエをおびきよせて食べちゃう。以前大阪大学の資料室で見たことがあるんです(標本)。な~んだか親近感をおぼえたですよ。

投稿: おたま | 2020年1月29日 (水) 13時45分

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