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2016年6月15日 (水)

映画・流れる


baseballbaseball


え~~っ!?アンビリーバボーーー
よろしいんでございますか?
こんな一度にご馳走いただいて・・

と、叫んでしまいそうな映画を見て参りました。
ご馳走・・・さいざんす。
日本映画史上最強の実力派女優がズラリと勢揃い。
黄金時代にはこんな顔合わせで映画が制作されていたのですね。

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「流れる」 
1956(昭和31年)東宝・白黒
 監督/成瀬巳喜男 原作/幸田文

芸者置屋の女主人であり現役芸者の(山田五十鈴)は男に入れあげたことが原因で腹違いの姉(原夏子)に借金があり、苦しい経営状態です。
一人娘(高峰秀子)は一度は座敷デビューしたものの、芸者を嫌い花柳界とは無縁の日常。
「誰にでも愛嬌を振りまくのはイヤ」という芯のある娘ではありますが、母の苦労を目の当たりにし、職を探したり、実父に会おうとしたり・・心が揺れています。

この置屋で辛うじて売れているのは若い芸者(岡田茉莉子)一人。
もう一人の通いの芸者(杉村春子)は年喰ってるわ(50歳という設定)お座敷は掛からないわ、いつも自分の鏡台の前で何か食べています。ただいまアパートで10歳も年下の男と同棲中。彼女一人の働きで生活している模様です。

こんな不景気な傾きかけた置屋にさらに、女主人の妹(中北千枝子)が10歳くらいの女の子を連れて転がりこんでいます。亭主(加藤大介)の浮気で別れたものの,彼女のほうは、いまだ未練がありそうです。自分一人では生活できないのです。
そこへ、女中に雇ってほしいと女性(田中絹代)が登場します。

そのほかに、女主人の姐さん芸者(栗島すみ子)。女だけの独特の世界を見せてくれます。
彼女の甥(中谷昇)。彼は芸者と客の間をコーディネートする役割。女の世界にあって男でなければ出来ない仕事があったのでしょう。
元居た芸子の叔父(宮口精二)がクレーマーとして登場。

映画の始まりのキャスト名にあった、南美江さんは分かったのですが、上田吉二郎、平凡太さんは見落としました。

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(画像・ウィキペディア)

凄いキャストでせうhappy01
この中で戦前に活躍された栗島すみ子さんは名前だけしか知りません。大女優さんだったそうです。特別出演です。

名優の誉れ高い女優さんたちの演技は当然として、私が注目したのは中北千枝子さんです。
先日紹介した原節子主演の「山の音」にも出演されていました。
その時は器量が悪くて僻みっぽい上原謙の妹役。

今回は女性としてどことなくキチンとしていなくて、フラフラしている。器量も悪ければ芸も無いので姉さんみたいに芸者になれなかった。いつも不満げなふくれっ面がなんかいいのです。
崩れた身のこなし、上手い女優さんだなあと思いました。
このルーズな人物像は、映画の中で唯一、「ちゃんとした」人・田中絹代の存在を際立たせていると思いました。

田中絹代演じる女中は原作者・幸田文の投影だと思われます。
しっかりした、それでいて控えめで、頭の回転の良い、気働きの出来る女性です。
彼女の目を通して零落してゆく、花街・芸者置屋という女の世界を描いています。

昭和30年代初めと言えば高度経済成長のまさに黎明期でありここからジャンジャンバリバリと経済NIPPONNが突き進んでいくのですが、社会の多様化ととともに、殿方の遊びの形態も変わっていったのでしょう。芸者の芸を楽しむ時代から文化面が取っ払われていきます。
三味線や踊りを愛するより、直接おネイチャンとコミュニケーションを取る場の方が魅力があったのかしらね。

「玄人・素人」というセリフが出て来ます。
素人さんとは違うんだという芸者の誇りが自分を磨き込んできたというのです。

それにしても山田五十鈴さんの三味線は素晴らしい。
惚れ惚れします。
(思わず、埃かぶっている自分の三味線を思い出しました)
杉村春子さんと向かい合ってお稽古をつけている場面があります。あそこだけでも100回くらい見たいです。

あれ程の女優陣。今、揃えることができるでしょうかね。

「女優」そのものの「玄人・素人」の境目がはっきりしない昨今。
「芸」に裏打ちされている凄みというか魅力を堪能させて貰いました。

原作。昔読んだことがあります。
やはり、家にありましたので読み返してみようと思います。


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コメント

「流れる」が映画化されたのは知ってましたが、こんなすごい女優陣だったとは…。
山田五十鈴の少しかすれたような声が大好きです。幸田文の文章はきりりとして読んでる時に、ちょっと背筋を伸ばしたくなります。
いい映画がかかってるんですね。

投稿: ばんび | 2016年6月15日 (水) 21時07分

baseballばんびさんへ
「流れる」を本棚から取り出してきました。
最初の文章から読ませます。
切ないほどキリリとしているんですよね。

昔、幸田文を読んだ時はその賢さに息が詰まるような気がしました。
今は違います。
映画の田中絹代(役)は極力、賢さを出さないようにしながら出ちゃう。この人の賢さは筋の通った人格なんですね。

これだけの女優さんが出ていながら魅力を消しあわない。面白かったです。

投稿: おたま | 2016年6月16日 (木) 08時14分

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