東光寺・木喰上人像
円空より100年後
同様に全国に仏像を残したのが「木喰明満上人」だ。
今から200年ほど前の人である。
円空仏はどこかの展覧会場でしか見たことは無いが
木喰仏はこの近隣の寺院。堂。個人宅に沢山残されていて、われわれは親しく「木喰(もくじき)さんの笑仏(えみぶつ)」と呼んでいる。
Wikipediaによると晩年(91歳)故郷(山梨)を離れ消息を絶った。
というところで終わっている。
実は、その後関西へきて、この付近に木喰上人最晩年の仏像を多く残している。
お寺の住職や、村の住人の話は臨場感があって、わくわくする。
「夏草や堂守兼ねて自治会長」 おたま
村の人が輪番で管理するお堂に七体の像が安置されている
どれもみな。暖かで人間臭い。
それもそのはず、酒やごちそうを振舞ってもらったお礼に、村人をモデルにして彫ったものらしい。
だから、
これはうちのひい祖母さんに似てる。こちらは誰それの孫の誰ちゃんに似ていると、村人は愛情と親しみを込めて祀ってきた。
木喰というのは穀類・肉を断ち、木の実や芋の根の汁などをすすって修行することらしいが、まあ、御呼ばれもあっただろう。
木喰さん。無類の酒好きだったらしく、(へたな)歌なども残しておられる。
しかも、エロティックな部分も大いにおありで、「アレで、値打ちおとしてますねんがな」と識者は言われるが、そういうところが大好きだ。
先日訪ねた東光寺には14体の木喰仏が残されている。
中でも特筆すべきは
生木に彫られた「子安観音」
本来ならば生育する木に巻き込まれ胎内仏となるはずであったが。明治10年の落雷により枯死。
現在は寺庭の祠に祀られている。
東光寺は乳薬師の寺として知られていたが、近くに住む農婦が乳が出るようにお参りに行きたくても、田畑の仕事が終わった頃には日が暮れており、既にお堂が閉まっている・・と嘆くのを聞いた木喰さんが「それなら、堂の外に観音さんを彫ってやろう」と境内の大木に彫ったのがこの観音様である。ということだ。
「微笑仏村に花栗咲き満つる」 おたま
住職の話を聞くまでは「もくじきさん」をやや、「胡散臭い人やったんと違うん?」という思いでいた。
木喰は真言宗の戒律ではあるが、いわゆる修験道の行者ではなかったようだ。
おたまのイメージでは酒好き女好きで(女性好きといえば、現に尼僧寺から多くの像が出ている)ほぼ乞食さんに近い形ではなかったか。仏像を彫っては村人の饗にあずかった・・。そんな感じに思っていた。
「ごめんなさい。申し訳ありません」と反省。
・・・・・・・・・・・・
木喰上人の説いたものは何であったか。
それは「完全なる燃焼」であったようだ。
「完全に欲は燃やせ」喜びの世界を完結せよ。
それこそが生きるということ。
だから木喰仏はどこか人間臭く。暖かい。
残した文字はおおらかで、茄子や南瓜の絵はユーモラスだ。
もくじきさんは、その生涯を通して
有形無形の一切合財をまとう必要などどこにもないと教えてくれる。
180センチを超える(当時としては)大男だったそうだ。
(この記事は筆者が直接、見聞きした内容に基づいて書いています。
無断転載・転用をお断りします)
;2009/9~2013/8 の記事はコチラです⇒http://nurebumi.cocolog-nifty.com/
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コメント
木喰さんより円空仏が好きだったんですが
柳宗悦さんが収集した木喰仏を見て
その暖かさがやっとわかりました。
いいですね~。
いつの世も女性に優しいのはいいことです( ´艸`)プププ
昨日の花道考も大賛成です
投稿: kimi | 2014年2月23日 (日) 08時55分
こんにちは。おたまちゃんのブログ親しい友人に教えて頂きました。それ以来のファンです。そいて偶然?にも俳句を昨年の7月から始めた60代です。いろんなことを背負いつつも、おたまちゃんのブログで勇気と笑いを頂いています。生きるってしんどいけれど、生きていると思わぬことにも出会います。ささやかな幸せを感じることもあります。俳句はまだまだ・・・ソチ五輪が終わりますね。感動は人それぞれですが、メダルもメダルを手にできなかった人もすべての選手から感動とチャレンジ精神のおすそ分けを頂きました。春はもう目の前まで来ていますね。
投稿: いろは | 2014年2月23日 (日) 11時04分
柳宗悦に注目されるまでは、仏像は川で泳ぐ子どもたちの「浮き」替わりになっていたそうですよ。ほとんど流木扱い。
今では持ち帰ろうとする人(泥棒)がいるので、セコムをつけてエライ物入りやって住職が嘆いてはりました。
一度、見に来てくださいね。
こんにちは。初めまして。コメントありがとうございます。
俳句は紙と鉛筆さえあればいつでもどこでも出来るのでいいですよね。
自然や景色に目を向けるのも楽しいし、周りの先輩方をみても、好奇心のかたまりでとても若々しいですよ。
是非是非、続けてくださいませね。
「生きるの大好き冬の初めが春に似て」
おたまの好きな池田澄子の句です。
ま。色々あっても
死ぬまで生きなきゃいけないんだから、大好き!でいたいですね。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いします
投稿: おたま | 2014年2月23日 (日) 20時26分